大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪地方裁判所 昭和42年(わ)2926号 判決 1969年7月18日

本店の所在地

大阪市東成区大今里本町四丁目五番地

名称

下村諸機株式会社

代表者の氏名

下村清之佐

本籍

大阪市東成区南中本町一丁目一六八番地

住居

同町二丁目七〇番地

職業

会社役員

氏名

下村清之佐

年令

明治三七年三月六日生

右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官岡靖彦出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人下村諸機株式会社を、判示第一の事実につき罰金一六〇万円に、判示第二の事実につき罰金三三〇万円に処する。

被告人下村清之佐を懲役六月に処する。

被告人下村清之佐に対し、本裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罰となるべき事実)

被告人下村諸機株式式会社(以下被告会社という。)は、大阪市東成区大今里本町四丁目五番地に本店を置き、プレス機等諸機械の製作販売業を営むことを目的とする株式会社であり、被告人下村清之佐は、被告会社の代表取締役として、同会社の業務全般を統括していた者であるが、被告人下村清之佐は、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、

第一、昭和三五年二月一日から同三六年一月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が二、一三一万八、二一六円、これに対する法人税額が八〇〇万九二二円であったのにかかわらず、被告会社の公表経理上材料の架空仕入れを計上するとともに、材料の期末たな卸高を過少に見積る不正経理を行って、右所得金額中一、七一三万九、九四五円を秘匿したうえ、同年三月三一日所轄東成税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が四一七万八、二七一円、これに対する法人税額が一四八万七、七一〇円である旨過少に記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対する法人税六五一万三、二一二円を免れ、

第二、同三六年二月一日から同三七年一月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が五、〇四二万六七六円、これに対する法人税額が一、九〇五万九、八五六円であったのにかかわらず、前記第一におけると同様の方法により、右所得金額中三、五〇二万三、一八六円を秘匿したうえ、同年三月三一日前記税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額が一、五三九万七、四九〇円、これに対する法人税額が五七五万一、〇一〇円である旨過少に記載した法人税確定申告書を提出し、右秘匿所得に対する法人税一、三三〇万八、八四六円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示の各事実につき

一、被告会社の登記簿謄本

一、下村清之佐作成の証明書(被告会社の定款)

一、大蔵事務官作成の各証明書(三通)(被告会社の昭和三四年ないし三六事業年度の各法人税申告書写)

一、差戻前第三回公判調書中、証人森本寿親、同松原満の各供述記載

一、差戻前第六回、第九回各公判調書中、証人下村麻瑳男の供述記載

一、同証人の当公判廷(第一二、第一三回公判)における各供述

一、同証人作成の「鋼材仕入明細書」と題する書面、昭和四三年九月二七日付「証明書」と題する書面および鋼板、丸鋼の仕入、使用一覧表各一通

一、押収の東栄鋼業株式会社の売上帳二冊(昭和四二年押第六六一号の7、8)および仕入帳二冊(同号の5、6)

一、押収の被告会社の買掛帳四冊(前同号の1ないし4)および売上帳二冊(同号の9、10)

一、被告人下村清之佐の当公判廷における供述

一、同人の検察官に対する各供述調書(三通)

一、同人の昭和三九年三月一六日付上申書

(証拠説明)

前掲各証拠によって認められる被告会社の昭和三五、三六両年度の別口損益勘定は、別紙両年度の別口損益計算書に記載のとおりである。すなわち、

一、両年度の簿外鋼材仕入

被告会社が両年度において被告人下村の個人所有の特殊鋼材一、四〇〇トンを東栄鋼業を経由して買い受け、その対価として総額九、五〇〇万円を東栄鋼業に支払った事実を認めることができるけれども、右取引のその都度の数量、単価が明らかでないため、各年度の取引数量(昭和三五年度二〇〇トン、昭和三六年度一二〇〇トン)に応じて右対価の額を均分して、各年度の簿外鋼材仕入高を認定した。

二、両年度の架空鋼材仕入

被告会社の帳簿上、被告会社が東栄鋼業から仕入れたものと記帳されている鋼材のうち、東栄鋼業の仕入先が株式会社優鉄と記帳されている分につき、前記一の特殊鋼材一、四〇〇トンの仕入れを簿外と認定したことに応じて、架空仕入れと認定した。

三、昭和三五年度の期末除外棚卸高

1. 被告会社の昭和三五年度期末棚卸資産の評価については、「材料」につき被告会社の決算書の分類に従うと鋼材(普通鋼および特殊鋼の鋼棒)ならびに鉄板(普通鋼および特殊鋼の鋼板)に棚卸の除外があったこと。

2. 被告会社の届出評価方法である最終仕入原価法を適用するについて、右材料を分類するに当っては、品質の点で普通鋼、特殊鋼の別、形状の点で鋼棒、鋼板の別に区分する限度以上の詳細な分類をなしうる証拠資料を欠く本件においては、右の限度の分類で満足すべきものと考えられること。

3. 昭和三五年度末の棚卸材料中には特殊鋼が存在しなかったこと。

4. 普通鋼の材料中除外の数量は、鋼板、鋼棒を通じて四九三・二九八トンであるところ、鋼棒については四・七八二トンの過大計上があるため、鋼板の除外数量は、四九八・〇八〇トンとなること。

5. 普通鋼の鋼板の最終仕入原価は、被告会社が関西鋼鉄株式会社から昭和三六年一月二〇日仕入分によりトン当り四万四、五〇〇円であること。

以上の各認定事実に基づき、昭和三五年度の期末除外棚卸高を認定した。

四、昭和三五年度架空期末棚卸高(同三六年度架空期首棚卸高)前記三の4の鋼棒四・七八二トンの過大計上分につき、被告会社の決算書額上の単価であるトン当り四万円を乗じて認定した。

五、昭和三六年度期末除外棚卸高

1. 昭和三五年度における前記三の1ないし3の各事情と同様の事情が昭和三六年度においても認められること。

2. 普通鋼の材料中除外の数量は、鋼板、鋼棒を通じて一、〇五三・五七八トンであり、うち鋼板が八九一・七八六トン、鋼棒が一六一・七九二トンであること。

3. 普通鋼の鋼板の最終仕入原価は、被告会社が東栄鋼業株式会社から同三六年一二月二七日仕入れ分によりトン当り四万一、〇〇〇円(弁護人は、同三七年一月一五日の取引におけるトン当り三万八、〇〇〇円によるべきである旨主張するけれども、右は東栄鋼業が優鉄から仕入れたとされる鋼材にかかる架空の取引の単価であるから、これを採用することができない。)であり、普通鋼の鋼棒のそれは、被告会社が大宝鋼材株式会社から同三七年一月二六日仕入れ分によりトン当り四万四、〇〇〇円(弁護人が主張の単価は、前記鋼板の個所で述べた理由により、これを採用することができず、また大宝鋼材株式会社からの同月三〇日、三一日の両日の取引分については、特殊な品質の鋼棒であるため、その取引の単価によることが相当でないものである。)であること。

以上の各認定事実に基づき昭和三六年度の期末除外棚卸高を認定した。

(法令の適用)

一、被告会社に対し

判示第一、第二の各事実につきそれぞれ法人税法(昭和四〇年法律第三四号)附則第一九条、同法による改正前の法人税法第四八条第一項、第五一条第一項

併合罪につき刑法第四五条前段、法人税法(昭和四〇年法律第三四号)附則第一九条、同三七年法律第四五号による削除前の前記改正前の法人税法第五二条

二、被告人下村清之佐に対し

判示第一、第二の各所為につきそれぞれ法人税法(昭和四〇年法律第三四号)附則第一九条、同法による改正前の法人税法第四八条第一項(いずれも懲役刑を選択する。)

併合罪につき 刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をする。)

刑の執行猶予につき 同法第二五条第一項

三、訴訟費用は、相当でないから、これを被告人両名に負担させない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 井上清)

昭和35年度別口損益計算書

<省略>

昭和36年度別口損益計算書

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例